AEVE ENDING
(ますます、マズイ…)
なんとかしなくては―――。
ロビンがそう考えた時だった。
「…誰に、頼まれたの」
ぞっとするような声色。
ただ一定に流れるそれに色はなく、本当にヒトなのかすら疑わしい。
感情を含まない―――否、激情を押さえつけている、声。
「…君が良く知る者だよ」
血に濡れることも厭わず倫子の体を抱き起こした雲雀を、桐生は白濁を以てして見返した。
静かに吹き荒ぶ風は、倫子の血臭を遥か彼方まで運ぶ。
何者かの見当がついたらしい雲雀は、ますます眼光を鋭くした。
今にも腐敗を貫く、高尚の証。
(神の眼は、いつも、)
「…君にはやはり、その眼が似合う」
そんな眼を向けられていながら、桐生は恍惚に呟いた。
まるで神の視界に映る己に陶酔するように―――。
そして冷ややかな空気を纏うそれに満足しているかのように。
(―――温もりを知ってしまった神は、堕落していくだけなのだ)
「孤高の神は強く気高く、そしてなにより、美しい」
血が似合う、と心底から想う。
特に彼女の血に濡れた修羅は、悲哀も相まって玲瓏としていた。
「修羅よ、」
だから変わるな。
歪ませることは、赦さない、と。
「罪人は、罪人のままで」
救いなど赦さない。
罪と悲しみにどっぷり浸かり、神となれ。
「君へ授けられた使命を忘れるな」
それは歴史を導く者の、忠告か或いは啓示か。
(この醜い地上に降り立った唯一の、神よ)
(君が、)
世界に絶望したなら終焉を。
(けれど君が、この世界に希望を見たのなら)
子を成し、次に引き継げ。
「構うか」
それは低く吐き出された、血肉の滲むような拒絶だった。
高く荒む風に濡れ羽の髪を揺らしながら、尚、その絶対的な存在感を露にしたまま。
腕の中で滴る朱すら、愛しいと乞うのは。