AEVE ENDING
「奥田先生、早く!」
真鶸に袖を引かれ、奥田は唇を噛み締めた。
泣いている場合ではない。
「誰か手を貸して!東部に連絡ができる子がいたら助っ人を呼んで!集中治療室開けるよ!ほら、さっさと動く!」
その場に居合わせた狼狽する生徒達に指示を出せば、大事な雲雀サマを救わんとすぐさま動き始めた。
数人が持ってき担架にふたりを乗せ、医務室へと急ぐ。
「雲雀!」
そこへやってきたのは、「マリア」メンバーのロビンだった。
けたたましく回廊を走る担架とテレポートと同時に併走しだした彼には、大した怪我はない。
「丁度良かった。君、なんでこうなったか知ってる?」
ガラガラと車輪が鳴く中で、ロビンはくしゃりと顔を歪めて見せた。
どうやら事情を知っているらしい。
「教えて」
黙りこくってしまったロビンに、奥田はもう一度、促す。
倫子の担架に手を掛けながら、ロビンは意を決したように口を開いた。
「―――桐生が、橘を殺したんだ」
あぁ、やはり、この傷は桐生のせいか。
鋭く深く刻まれたそれは、表面は火傷で爛れているが切口は無駄に美しく切り込まれている。
「呼吸も停まってた。血がたくさん出て、それで、雲雀がキレて―――」
力を、解放した。
凄まじいまでの能力はその場に乱気流を産み出し、天候まで左右する。
ただ静かに、そして緩やかに、まるで殻に閉じ籠っていくかのように、雲雀と倫子だけはなじられず、そこは丁度、台風の目のようだったという。
凄まじい爆音が響き渡り、「ビル」は屋上から破壊されていく。
『ただの小娘が、破壊の神を覚醒させたか』
まるで抗いがたい天災のように強く荒れるその場では、桐生すら為す術を持たなかった。
操られている双子が桐生を庇うように立ちながら、テレポートすらできないようだった。
「―――その嵐の中は強力な磁場みたいなもんで、アダムの能力は全て拡散しちまって密に練れない。『神』の前じゃ、俺たち『アダム』なんて無力に過ぎなかった」
悲鳴が絶えず聞こえていた。
階下のアダム達のものだろう。
破壊は、既にビル全体を飲み込もうとしていた。