AEVE ENDING






『ひばり、止めなきゃ、』

虫の息で、それでも彼女は。


『アナセスも、ロビ、も、双子も、それに、アミも、いるんだから、さ』

頼むから、もう喪いたくないんだ。

『…今、こんな状態で停止させれば、力が跳ね返るよ』

雲雀が倫子を抱く腕に力を込めた。

これほど莫大な能力だ。
もう既に雲雀の手からは離れてしまっている。

無理に抑え込めば、親である雲雀に跳ね返るのだろう。
そうなれば雲雀も、ただでは済まない。

己の能力に焼かれ、自爆同然となる。



『死ぬかもしれない』


そしてその言葉は、己を庇う言葉ではなかった。


『…らしくねーの。…大丈夫だって、わたしは』

笑いながら、離れるものか、と雲雀の頭を抱く腕に力を込める。

筋肉が収縮し、血液が吹き出た。

苦しいだろうに。

話すことも呼吸をすることも、苦しいだろうに。


それでも彼女は、笑う。




『あんたと一緒なら、そっちのほうが、ずっと、いい』

絶え絶えに吐き出した息は無駄に熱く、雲雀は痛む胸を抑えたまま倫子を抱き締めた。

こんな時だというのに、どうしようもなく、愛しさが増す。



『…橘』

意を決したように雲雀は倫子を抱え直し、激痛に呻くその体に最大限、優しく腕を回した。

雲雀が再び、ヒトらしくない表情を浮かべる。

まるで神に憑依されているかのように、虚ろで神々しい。



―――それはロビンにとって、不愉快な光景だった。

あまりにも、不愉快な光景だった。

まるで神聖な絵画のように、ふたりは神に祝福されている。


(…なん、で、お前らばっか、いつも、)

己が傷付くことを厭わないその潔さは潔癖過ぎて、なにもできない己の無力さを、味あわされて。

そうして徐々に減速していった破壊は、アナセスに引き継がれた。

雲雀はやはり瀕死の状態であり、腕の中の倫子に至っては既に心肺停止状態だ。
ふたりを治癒に向かわせ、爆発の残り滓(かす)はアナセスが処理する。


『ロビン、貴方はふたりを導いて』

アナセスから離れたくはなかったが、雲雀と橘も、放ってはおけなかった。





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