AEVE ENDING
どこに出るのだろうか。
疑問に思いながらも黙って雲雀のあとに付いていた倫子の目の前で、視界を遮っていた硬質の扉が音もなく開かれた。
途端、静かだった空間に悲鳴が轟く。
「雲雀さまっ!」
訂正、悲鳴は悲鳴でも、これは喜びの悲鳴だ。
扉の先には小さな波止場があり、そこには西部箱舟会長の朝比奈雛の姿が。
雲雀の姿を確認して、泳ぐように駆けてくる。
柔らかな髪を靡かせて、少女漫画さながらに花をちりばめたりして。
「…ぶらぼー」
愛らしく頬を染めて雲雀に挨拶する朝比奈の姿はいじらしく微笑ましいが、未だ眠気も覚めやらない朝一番にラブラブビームは、つらい。しかも一方通行。つらい。
見れば朝比奈がいた場所には、奥田やミスレイダー、例のクソやかましい東部の梶本、東部西部混合のアダム達数人が揃っている。
朝比奈のラブコールを完全に無視して、雲雀は歩調を早めることもなくそちらに向かい始めた。
当然ながら倫子もそれに続こうと足を踏み出すが。
「橘ぁ!」
ぎゃ。
勢いよく吐き出された怒鳴り声に、倫子は反射的に肩を竦めた。
見れば、やはりあの梶本がふんぞり返ってこちらを見ている。
理由は解らないが、腹を立てているらしい。
ズカズカ歩調を早めて倫子の前までやって来ると、顔を真っ赤にして怒りのまま倫子を頭から怒鳴りつけ始めた。
「遅刻だぞ!落ちこぼれが足を引っ張るな!」
と、キタ。
「…はあ?教師が生徒を堂々と落ちこぼれ呼ばわりって、あんた何様?教師様ですか?ちがいますよね、教師失格ですよね」
頭ごなしに怒鳴られているにも関わらず、倫子は構えることもなくやる気なさげに言い返す。
こいつきらいだ。