AEVE ENDING
「今でも枷に違いない。破壊遺伝子を持つ彼の使命を、倫子は自身の存在で妨げようとしてる―――。倫子の意思ではなく、雲雀くんの意思でね」
着実に、雲雀の中で倫子の存在は大きくなってきている。
己の使命すら、否定しかねないほどに。
「破壊遺伝子…?なによ、それ」
奥田の言葉に、ササリが不可解だと言わんばかりに語尾を強めた。
この男はいつもそうだ。
その奇才を駆使し、本来なら知るべきではないことすら、読み取ってしまう。
「さあ…、なあんでもないですよ。ただの独り言、です」
そうして問い詰めようとすれば、憎たらしいほど馬鹿にした態度でひらりとかわすのだ。
腹が立ったササリは、そのまま医務室を後にした。
「えっ、手伝わないの!?」
背後からの非難に、耳を貸す必要もない。
(飛び立ちなさい)
深淵の底。
暗いのか明るいのかすら、わからない。
(貴方は、尊い神の子だから)
呪文のように、或いは子守唄のように流れるそれは。
(だから、枷は必要ないの)
その枷を造ったのは誰でもない、貴方だと言うのに。
(飛びなさい)
世界はいつも、僕を飲み込もうとする。