AEVE ENDING





その馬鹿にしきった発言と、しらけた眼差しに梶本は更に激昂する。
浅黒い顔が、見る見るうちに赤茶色に染まった。

「貴様!」

うっさいな。

(大体、雲雀だって同罪じゃん)

確かに寝坊して雲雀の足を引っ張ったのは確かだが、自分ひとりを責められるとは。

(エコヒイキばっかしやがって)

ぶつぶつ小言を吐きつつ、頭から素直に説教を喰らう倫子の横を我知らぬ存ぜぬと通過する協調性のないパートナー、雲雀。
弁解くらいしてくれてもいいじゃないか。

(…クソスズメ!)

だめもとでテレパスで文句を叫んでみるが。

(もとを辿れば君のせいじゃない。僕は被害者だと思うんだけど)
(だからって事情も知らない男に、どうしてこんな頭ごなしに)

結局、雲雀が悪かろうが悪くなかろうが、火の粉は全て自分に掛かるのだろう。
昨日の騒ぎを思い出しても、この梶本が雲雀にとやかく言うなど想像すらできない。

(あーあ、やだやだやだやだ)
(落ちこぼれ扱いされるのも苦労するね)
(まわりくどく言わないで、落ちこぼれってはっきり言えば)

怒鳴る梶本の言葉を無視して、俯いたまま髪の隙間から雲雀を睨みつけた。
しかし雲雀の足は既に波止場へと向かっていて、そのすっと伸びた背中しか見えない。


「僕は、君が落ちこぼれだとは思わないよ」

けれど雲雀の囁きは、潮風に乗って倫子の耳にちゃんと届いた。

「…え、」

その柔らかな声に、顔が無意識に熱くなる。

そんな嬉しいことを言ってくれたのは、アミ以来だ。
それが優しさなのか虚言なのか戯言なのか―――そんなこと、解りはしないけど。

攻撃性のない言葉に優しく心臓が跳ねて、梶本の罵詈雑言はシャットアウトされた。


『落ちこぼれだとは、思わないよ』

(なんだそれ、急に。なんだよ、ちょっとうれし、)



「家畜は家畜。皆、平等に扱わなきゃね」

(…い)

かちく?


「ってっめえええ!なんだそのオチは!返せ!今この瞬間のときめきを返せ!」

ほぼ本能的に攻撃態勢に入った倫子は、足元に落ちていた特大の石を拾い上げ大きく振りかぶり―――雲雀の後頭部に向かって、投げた。




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