AEVE ENDING
「……もう、雲雀とは一緒にいれない。………いたく、ない」
言いたくもないだろう台詞を口にする。
覚悟しなくては言えないようなそれを何故、吐く必要があるのか。
(…雲雀に捧げるには、お前は欠落が多すぎたかな)
悲しいかな。
一番憂いているのは雲雀本人より、当人である倫子だ。
「…もう、耐えきれない」
それは、重責。
雲雀に己から飛び込むには、倫子は自分を疎い過ぎている。
「みち、」
呼び掛けようとして、すぐさま言葉は途切れた。
ゆらゆらと揺れていた膜が破け、音もなく、一筋、落ちる。
それを視覚で感知した途端、倫子は医務室を出ていってしまった。
逃げるように急く足音が耳に痛い。
―――また、誰にも見せず泣く気なのだろう。
研究時のように、たった独り、背負う。
(そうして堪えきれなくなるくせに、)
それなのに、息を詰めるように前を向くから。
(バカヤロー)
あんな顔ができるくらい、お前は雲雀を好きなのに。
「いつからあんな、女の顔するようになったかなあ…」
ままならないのは、お前が感じる罪への呵責のせいか。
―――或いは。
「いやいや…、まさか」
ふと浮上した懸念にはもう一筋の救いもなかった。
事実は何者に揺るがされることなく確かに存在しているのだ。
(―――頼むからもう、苦しんでくれるなよ)
優先すべき事柄は、なんだろう。