AEVE ENDING






今にも体重がずるずると床に吸い込まれていきそうだった。

奥田と話をしているうちに表れた弱さに舌打ちする。

一度決壊したら、なかなか再築できないのだ、この砦は。

今も重い足を引きずりながら、ぱたぱたと床を叩く滴に自分が情けなくなる。





『―――お前はそれでいいの』

奥田の言葉が、わざわざ苛立ちを刺激するように繰り返されている。


(…いいわけない)

いいわけ、ないだろう。

でももう、雲雀の傍にいたらダメだ。



「…ひっ、」

もう、涙を見せないでいることすら困難なのに。

「ごめん、ん」

脆弱な私を許して。
あんたの期待には応えられない。

私は、欠陥品だから。


(あんたが望む結末を、望む形で叶えてやれない)

ふと、美しいアナセスが脳裏に過った。

そうして彼女が米国から呼ばれた「意味」を直感的に悟って、ぼやけた視界が更に見えなくなる。


(…あぁ、なんだ)

はじめから、要らなかったのだ。

私が例え役立たずでも、駒はきちんと揃えられている。


(…なんだ、)


また要らないと、言われてしまった。










「―――倫子、さん…?」

嗚咽ばかりが聴覚を支配する中、控え目に掛けられた声に心臓が震えた。
だからといって、震えが治まるまで無視するわけにもいかない。

俯けていた顔を上げて、ゆっくり声の主を見た。


この柔らかで暖かな、声は。






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