AEVE ENDING
雲雀に至っては、こちらに冷ややかな一瞥をくれて一言。
「部外者は黙ってて」
冷徹に吐き出されたそれは事実であり、思わず後退さる。
しかし、こんなところで退けない。
アナセスがいいと言っているならば、それにただ従うことが信条であったのに、それに反してまで、何故、ここまで雲雀に楯突いているのか、自分ですらわからなかった。
ただ、頭をちらつくのは。
『黙って見てたら。橘は、君が思うほどバカじゃない』
それは誰より、倫子を信頼している声だ。
断ち切れない絆が、互いを繋いでいるのに。
『どうよ?』
『…まあまあだね』
そうして笑い合っていたふたりは、誰より深く重り合っていたのに。
(…俺は、馬鹿か)
それが崩れてしまうのが気に喰わないだなんて、馬鹿げてる。
―――橘がまた泣くのを、もう見たくない。
(アホだ、俺はアホだ)
あのビジョンに操作されているに違いない。
だから、こんなに。
「…っ橘はどうなるんだよ!お前、あいつのことすっげー大事にしてたろ!なんでそんな、冷静に…っ、」
雲雀の眼孔が、氷のように鋭くなっていく。
あぁ、ムカつくだろうな。
俺はお前らの関係には全く関係のねぇただの部外者だから。
(わかってんだよ、俺がこんなこと言ったって、お前にはなにひとつ響かない)
それでも。
「また、あいつが泣くだろ…っ!」
いつもいつもいつも。
回廊で、雲雀狂の男に絡まれて殴られて傷付いて、それでも果敢にやり返して、腫らした眼で、強く睨みつけて。
『悪かったよ』
それでもすぐさま、平凡過ぎる笑顔を浮かべて。
『あんたにもアナセスにも、悪いことした』
素直に謝ることができる奴で、朗らかな空気をいつも、纏いながら。