AEVE ENDING
(…だから、なんで俺は、)
アナセスが驚いた顔でロビンを見ていた。
それはそうだろう。
あれだけ毛嫌いしていた倫子を、まさかロビンが庇うとは思わなかった筈だ。
雲雀は雲雀で、ロビンの葛藤がわかっているのかいないのか、不愉快を形にしたような表情を浮かべている。
心臓を貫く視線は、逸らすことも逃げることもかなわない。
(―――毛嫌いしてたわけじゃない)
ただ、躊躇を感じていた。
(…あれに惹かれたくなくて)
あの強烈な眼に、いつも喰らいつかれそうになりながら。
『…雲雀、』
あの声はいつでも、あいつを求めているのに。
『―――雲雀』
切なさに胸を焦がすほど儚げに、強く、脇目すらせず、ただ直向きな限り、尽くして。
なのに、お前は。
「…ひとつ、教えてあげる」
感情のまま叫んだ喉に沁みる、玲瓏な声、と同時。
「…っ、ぐ!」
腹を蹴り破るような衝撃に、呼吸の仕方を忘れた。
とんでもない圧力のそれはロビンの身体をなんなく弾き飛ばし、白亜の壁に磔にする。
「…ロビン!」
アナセスの悲鳴染みた声が耳に突いて、すぐ。
「君が橘の名を口にすると不愉快だ。…酷くね」
淡白なまでに単調な声色が空気を裂く。
声なのか、音なのか。
揺れる脳天に直接響くそれは、神の啓示。
「去れ。今は誰の顔も見る気になれない」
(神は、なにを願う?)