AEVE ENDING
「なんだよ、聞こえねぇよ。言い訳でもするか?妹殺しが偉そうに!自分の目が見えるだけでも有り難く思え。不幸自慢でアナセスを貶めるな!」
あぁ、揺れている。
倫子の視界はきっともう崩壊してる。
反射する白が眩しい。
泣けよ。
そうして、崩れて。
―――縋りついちまえ。
ゴッ…ッ。
「―――…っ、」
倫子の悲鳴が空を裂いた。
ロビンが殴られたからじゃない。
なにに対しての悲鳴か、言われなくてもわかっている。
半狂乱の悲鳴を耳に、ロビンは殴られた頬の傷みをただぼんやりと感じていた。
殴ったのは、雲雀だ。
崩れるように悲鳴を上げた倫子の横をすり抜け、すぐさまロビンに拳を振り上げた。
やはり無表情に近いそれは、ぞっとするほど端正で、冷たい。
「…なんだよ、その眼」
それにすら、腹が立つ。
こちらはこんなに激昂しているのに、それを見下すような冷静さが、ロビンの癇に障った。
雲雀の背後に立つ倫子の表情は、ロビンには見えななかった。
「…結局、お前も俺と一緒じゃねぇか。お前は存在するだけで、あいつを貶める」
感情のまま雲雀の襟首に掴み掛かる。
苛々する。
既に、自分でもなにを口走っているのかすらわからなくなっていた。
その冷たさが、彼女の為だけに熱を帯びると知っているから。
「…以前、警告したよね」
至近距離で見る雲雀の視線は、静か過ぎる湖面のようだった。
けれど静かに吐き出された言葉は抑揚のない苛立ちが含まれていて、その差が、この場所の温度を下げる。
「僕以外が橘を貶めるのは、赦さない」
吹き飛ばされた。
柱が割れるほど叩きつけられた体は、けれどまだ解放されていない。
首に張り付いた冷たい掌に、ぞっと息を飲む。
殺気と共に凶悪過ぎる能力がじわりと空気に染み出していた。
「…っ」
下から睨みつけてくる雲雀の目は、本気だ。
それだけで、アダムとしての肌が粟立つ。
修羅の性質を、この男は内に眠らせているのだ。
「っ―――…、」
脊椎が軋む。
背中が痛い。
器官を微々たる力で少しずつ絞められていく。
こ ろ さ れ る。