AEVE ENDING
私はまだ知らなかった。
これから進む先へ在る、私を貶める世界の口膣を。
「えーとね、」
海に面した西部箱舟の波止場に集合した、セクション新生、三組のペア。
―――を前に、奥田の間抜けな面が惜しげもなく曝されている。
「これから課せられるミッションの内容を説明する前に、ひとつ」
(…ミッション?セクションじゃなく?)
倫子の疑問はもっともだったらしい。
その場にいる他の生徒達も、不審げに奥田を見ている。
そんな真摯な視線を受けつつも、奥田は相変わらずのくわえ煙草をぷらぷらと揺らし、だらしない。
「ま、ぶっちゃけ言っちゃうと、今回お前らは、合同セクションには参加しない!」
だらしないまま、口ばかりは偉そうにそう宣言した。
「「―――は?」」
奥田の言葉に、ペア三組の声が一人をのぞき見事にハモる。
「セクションに参加しないとは、どういう意味なのでしょうか?」
名前は知らないが、東部の制服を着ている真面目そうな生徒がそう口にした。
「や、俺はね、依怙贔屓はよくないっつったんだけどね、他の奴らがさぁ、東部の校長とかね、アイツらがさぁ、お前らはセクションに参加するにゃちと優秀過ぎるかも、なんて言うからぁ」
だらっだらだらだら。
ふざけた口調で真面目な話を続けるばかに、皆が皆ウンザリする。
「…奥田先生!」
そんな説明をする奥田にすかさずほかの教師が口を挟んだ。
「…あ、はいはい。まぁつまりね、お前らはセクションの過程をすっ飛ばして、ちょいと早めに実戦訓練を開始するわけである!」
芝居がかった奥田の言葉に、倫子はやっと納得した。
(…昨日、奥田が言っていた「サバイバルコース」とやらが、合同セクションなんかで収まるわけが、ない)
「つまりね、ちと危険だけど、お前らならやれるっつって、校長さんがね、や、決して面白そうだなってんで無理矢理押し切ったわけじゃないよ?信じてね、そこは信じてね。…はい、とにかく」
脱線があまりにもひどい奥田の話から本筋を抜き出すのは大変だった。
しかもその暢気な口調のせいで、危機感と緊張感があまり伝わらない。