AEVE ENDING
『―――子を成し引き継がなければ、神の子はいつか』
夢の中の男は、雲雀はそれを望んでいると言った。
破壊の遺伝子に従うか、或いは。
『子を成すことに、彼を救う手立てが』
―――暗く深い陰惨な過去からあいつを救えるなら、なんだってできると思っていた。
『貴様は醜い、橘』
醜い私を。
哀れな私を。
『過去はどうだっていい。橘じゃなきゃ、要らない』
必要としてくれた人。
ひび割れた皮膚を優しく撫でて、愛でてくれた人。
(死ぬことで救われるなら、私が殺したかった)
喪うことになってしまっても、それでも共に朽ちるなら構わないと、そう思っていた。
(…違う、そんな難しいことじゃなくて)
そんなことじゃ、なくて。
(ただ、雲雀が好きなだけなのに…)
それだけはなによりも確かな真実だというのに。
『一体、誰が好きなの』
雲雀はわかっていてそう口にした。
(…こいつは、私で遊んでる)
悔しさに唇を噛んだが、涙は止まってはくれなかった。
(―――違う、雲雀はなにも、わかってない)
「…うるさい、」
私が抱える虚しさも悔しさもなにも、雲雀は知らない。
「…うるさいうるさいうるさい」
誰も、わかってなんかくれない。
『…倫子、話がある』
奥田は言ったのだ。
私を底に墜とす言葉を、確かに。
「…っあんたになにがわかる!!」
この口から出る悲鳴は、いつだって不愉快な響きと化す。
拘束されていた腕を振り払い、体を反転して雲雀の真正面に立った。
なにも纏わない体を曝すことになったが、それで良かった。
醜い体を前に、嫌悪すればいい。
(―――嫌いになれよ)