AEVE ENDING
「動物は死して尚、土に還りその魂は再び世界の活力となり巡回する。それは人もアダムも同じである筈なのに、何故、共存することが叶わないのか。鳥や魚、獣と同様に何故、土を愛し海を愛し世界と寄り添って生きていけないのか」
倫子は戸惑っていた。
けれど、桐生の気迫をその全身で感じ取り、理解しようとしているのかもしれない。
―――桐生はもう、魂を失った殻に過ぎないということを。
「何故、人間ばかりがその知恵と傲慢さを以て、「母」を独占するのか」
この星は、美しかった。
生命に満ち溢れた、母のようだと口にしたのは誰であったか。
「お前達も食事をするだろう。命あるものは全て、糧を得ながら生きることが使命であり宿命だからだ。けれど、そこには必ず犠牲がある。得てばかりではサイクルは成り立たない。還していかなくてはならないのだ。我々を育む力を持った、唯一の「母」に」
母なる大地に恩を仇で報いる生き物など果たして、人間以外にいるのだろうか。
「…この幾田桐生、自身がアダムという新人類として産まれたことが誇りであった。醜い人間とは、分断された存在でいたかったからだ」
神は、遣わされた。
憐れな人類の為に。
アダムという、新しい分岐点を。
「母」を救う能力を持つ、彼らを。
彼らは、高潔なる神と「母」から産まれた、救いの手立て。
(…莫迦だね、桐生)
「同じだよ」
ぽつり。
反論するような色は見せず、倫子は小さくそう漏らした。
桐生はなにを言い返すこともなく、ただ、じ、と彼女を見ている。
「…同じだよ、桐生。ヒトもアダムも、同じなんだよ。お前が毛嫌いする傲慢さも醜さも、アダムはヒトと同じように、持ち合わせている」
変わらない。
世界はなにひとつ、救われていない。
(母の痛みは、こども達に届かない)