AEVE ENDING
「―――落ちこぼれの波長ですわ」
ぼそりと背後に立つ生徒に呟かれた。
それはすとんと私の耳に染みて、思わず納得してしまう。
あぁそうか、成る程。
人とはちょっと違う波長って、落ちこぼれの波長ってことか。
そうかも、と私が納得している前でアミが目を丸くしている。
「…はい?」
そうだ、今の声は誰の声だ。
不審に思って振り向くと、見ているこちらが居たたまれなくなるほどスカート丈を短くした女子生徒が立っていた。
どうやら今の中傷はこの人物かららしい。
大人びた雰囲気を纏う彼女は、立ったまま私を見下し眼光を強くしている。
まるで、害虫でも見るような眼だ。
私、なにかしたっけ。
心当たりが多すぎて困る。
ていうか、だれ?
「橘、この人、西部箱舟の会長だよ」
突如現れた女子生徒を反射的に見つめ返していた私の胸倉を掴んで、アミが耳元で囁いた。
(…会長?)
ああこれが、なんて考えながら短いスカートに視線がいく。
制服の柔らかなプリーツは、太股の真ん中までしかない。パンツ見えそう。
「あんた、喧嘩なんて買っちゃダメよ」
アミが警戒するように耳打ちする。
いや買わねーよ?
否定はするが、アミの言い分も当然だと納得する。
各箱舟の代表、つまり生徒会長は、サイコキネシスの能力、頭脳共にトップの人間が選ばれる。
売られた喧嘩を買うにしても、私が勝つ見込みはゼロなわけで。
「まあ、イヴの友人がよく吠えること」
お上品に嗤って見せた彼女の、なんて憎たらしいこと。
誰もが好むような愛らしい容姿に似合わない、わざとらしい嘲りの口調。
こういうタイプは苦手だ。接触は全面で拒否。
だったんだけど。
「あんたねぇ!」
しかし会長が発した「イヴ」という言葉に、アミが過剰反応を示してしまった。
「イヴ」は、私達アダムにとって最低最悪の嘲りだ。
生きていることすら否定しかねないほど、効果は凶悪。
「アミ、いいよ」
折角私が引こうと決めたのに、あんたが怒ってどうする。嬉しいけどさ。
アミが私を想って会長に楯突いてくれたってだけで感動しちゃう。
それに、もともと「イヴ」は風当たりが強いから、こんなのは慣れっこだ。