AEVE ENDING
「…だからこそ、橘倫子を利用してもう一人の神を作ろうとした…」
決断はならば任せようと、彼は考えていたのだ。
孤独でなくなった修羅が、では、どのような決断を下すのか。
紛い物の醜い神、橘倫子は真性の神になにをもたらすのか。
―――すべてを。
「真鶸という少年に施術したのも、そのために…」
決断が下されぬまま、雲雀と倫子の神が死んだ時。
ならば、受け継ぐ者が必要であるから。
(―――雲雀さまが何代にも渡って受け継がれた血の覚醒者であるように)
後世へと血を運ぶ橋と化した真鶸を、修羅の後継者として。
「…雲雀さまが、選べるように」
それは純粋な優しさでは、決してなくて。
『子を産めぬ橘を、きっと雲雀は選ぶだろう』
雲雀は、先祖が続けてきた血の営みを、使命を、血と憎しみに満ちた運命を、倫子の為なら躊躇なく絶つだろうと。
それでは、過去はあまりにも報われない。
『…着実に神に近付いていく橘倫子を見て、私は恐ろしくなった。あの姿はきっと、何百年も昔に生きた破壊遺伝子の少女と同じものなのだ。ヒトの醜い利己によってモルモットにされた憐れな少女に。ならば私は、今、なにをしているのか。あれほど嫌悪した罪を繰り返している。神を創ることに、神を救うことに、橘倫子という個体を犠牲にしている。それは、なにを意味するのか。私は―――』
「絶望」を、己の手で紡ぎあげていく。