AEVE ENDING
「見てみたいなあ…」
真鶸がぽそりと呟いた。
テラスの手すりに腰掛けたまま、ぐんと首を反らして暗い空を見上げている。
その黒曜石のような瞳に、世界はどう映っているのだろう。
「温かい太陽や、それに照らされる眩しい海、青空や星空は、……僕が想像しているものより、ずっとずっと、綺麗なんだろうな」
温室にいた頃、寂しくて、よく、空想していたんです。
そうはにかみながら笑う真鶸に、心底からその願いを叶えてあげたいと思った。
(私にそんな力はないけれど、それでも、いつか)
―――いつか。
「……見れるよ」
真鶸の隣で、澄んだ声が約束の言葉を上げる。
意外な声に、真鶸と一緒になって見つめれば、雲雀も同じようにこちらを見つめていて、そして珍しく、笑みを浮かべていた。
(それは神の愛だ)
「…いつかきっと、見せてあげる」
笑みが深まって、情けない心臓が、ずくりと鳴く。
見つめられるだけで、一点の曇りなく慈しまれているような気分に陥る、その慈雨のような、笑み。
(…雲雀、)
ちらりと絡み合った視線が、倫子に全てを伝えていた。
(…うん、そうだね)
自然と笑みを浮かべた倫子に、雲雀のそれもより一層深みを増す。
―――それだけで、世界は歓喜する。
「兄様…」
真鶸が震える声で雲雀の名を呼んだ。
それを見つめながら、真っ直ぐに、受け止めて。
「だから待ってて、真鶸」
約束をしよう。
私達が幸せになるための。
私達が誰かを愛するための、小さな約束を。
―――約束を、しよう。