AEVE ENDING
「―――そういえば、雲雀さまと倫子さんは…」
そんなことを考えていたところで、アナセスが不思議そうな声を上げた。
そこでやっと、真鶸はアナセスに見惚れている場合ではなかったことを思い出す。
「あ、あのね、アナセ…」
そしてアナセスに事情を説明する前に、招待客の間を挨拶にまわっていた本日の主役、アミと奥田が現れた。
何度目かわからない祝いの言葉を交わし、しかしアミは矢次早に口を開く。
「真鶸くん、雲雀くんと倫子を見てないかな?」
「さっきから探してるんだけど、見当たらないんだよねぇ」
新郎は花嫁にべったりとくっついて不思議そうに言う。
やはり彼らも気付いていたらしい。
主役の次に目立つであろう二人の不在を。
「―――僕も探してるんです。式が始まった時から見当たらなくて…」
真鶸が困ったように眉を下げる。
やはり知らないか、と主役の二人も肩を落とした。
「全く、一番の立役者がいなくてどうするのよ…」
アミが少しだけ寂しげに俯き、奥田は神妙な顔つきになる。
沈んでしまった主役二人に、真鶸とアナセスは慌てて弁護しようと口を開いた……その時だった。
―――ビュオオオオッ。
「うわっ」
真鶸の軽い体が一瞬宙に浮いてしまうほど強い風が吹き抜けた。
人が塵のように吹き飛ばされそうな勢いの、強烈な風である。
突如真横に吹いた突風に、式場のあちこちから驚愕の悲鳴が上がる。
「な、に…」
アミを庇う奥田は、その強風になにかを感じとったらしい。
アミを抱き竦め、強風に眼を潰されそうになりながら、導かれるように天空を見上げた。
「あ…!」
豪豪と音を立てておさまりつつある突風の彼方―――限りなく高い尖塔の天辺に、彼らはいた。
高々と聳える十字架の上で、まるで神と天使が降臨したように。
「兄様っ」
「倫子!」
気配に気付いた真鶸とアミが同時に叫ぶ。
いつもと同様、箱舟の制服を着込んでいる倫子と雲雀は、十字架を背に悠然とこちらを見下ろしていた。