AEVE ENDING
―――にやり。
倫子が彼女らしい笑みを浮かべ、呆然とする真下の人々を導くように空へと向けて手を上げた。
その迷いなく掲げられた指の先を真っ直ぐ天上に向ける―――。
「わぁ…っ」
真鶸の隣に立っていたアナセスが、彼女にしては珍しく幼げな歓喜の声を上げた。
真鶸とアミ、奥田、その他招待客達は呆然としたまま口を開け放している。
「きれい…」
―――アナセスの心の眼の先には、深く深く、この世のなによりも深く澄んだ青が広がっていた。
それは間違いなく、「青空」。
重い雲を割って現れた、ぽっかりと開いた空間から顔を覗かせたそれは、息を飲むほどに美しく、偉大。
深く艶やかな、どこまでも突き抜ける青が、まるで、今にも世界を覆わんとしているようで―――。
(あぁ、まるで、呼吸をしているみたい)
この世界が、生き物が、人が、星が、今、息を吹き孵したのだ。
「おめでとう、アミ」
倫子が笑う。
修羅と落ちこぼれ二人の出現。
そして、朽ちても見ることは叶わなかったであろう青空に、皆が皆、あんぐりと表情を固めたまま動かない。
「うちらからのプレゼントでーす…って言っても、雲雀がやったんだけどさー」
雲雀の手を握ったまま、ケラケラと笑う。
そこには確かに、「橘倫子」の姿があった。
少し落ち着いてきた頃に、観客の中でざわめきが生まれはじめた。
倫子を罵る声ではなく、青空への感嘆、賞賛の声。
一番に喜んだのは勿論、主役の二人である。
「み、倫子…っ、雲雀くん…!あ、ありがとう、っ!」
アミは化粧が落ちることも気にせず、ぼろぼろ音を立てて涙を流し始めた。
奥田は奥田で、彼も初めて見る青空にいたく感動したらしい。
「憎らしいことするなぁー!チューしてやっから降りといで!みっちゃん!女の子がスカート履いてそんなとこに立つんじゃないのっ」
とうとう感極まって叫ぶ。
「気持ち悪い」
しかし、雲雀の一言に撃沈した。