AEVE ENDING






「…アナセス、真鶸をよろしくお願いします」

そして隣に立つアナセスにも向かって、一言。

アナセスは少しだけ泣きそうになりながら、彼女らしく穏やかな微笑みを浮かべ、力強く頷き返した。

それににやりと笑い返して、倫子は世話を焼くように雲雀を小突いた。



「…なに」
「なに、じゃねーよ。一言」
「いやだよ」
「照れるなよ」

そんな会話を済ませると、雲雀は渋々といった様子で真鶸に向き直った。

ふたりの頭上には相変わらず、雲の合間にぽっかり空いたポケットに青空が広がっている。


「…真鶸」

少し声色を落としたそこに、ひとつ。

思わず背筋を伸ばした真鶸に、雲雀は破顔した。




「君は僕の、唯一の誇りだよ、真鶸」


そうして蕩けてしまうような笑みで、弟に餞別をひとつ。

真鶸が泣いてしまったのは、仕方のないことだったのかもしれない。






「…あんたたち、さっきからなに言ってんのよ」

泣きじゃくってしまった真鶸を横に、アミが強ばった笑みを浮かべている。

二人が一体なにを考えているのか―――それはわからないが、胸を占める嫌な予感があるのだ、確かに。


「ばかなこと言ってないで早く降りてきなさいよ!この後はパーティーが…」

焦燥を浮かべる花嫁に、倫子は困ったように笑みを浮かべた。

その唇が、小さく揺れる。



―――ごめん。







「……倫子?」

その様子に、奥田が探るような声を上げた。

奇妙な違和感と緊張感に、けれどそれでも倫子は笑ったままだ。


「ちっさい時からいつも一緒だったけど、毎日バカみたいに笑ってられたの、アミのお陰だよ」


やはり、笑う。


「…っだから、意味わかんないこと言ってないで早く降りてこいって言ってんの、…橘!」

倫子の声を遮るようにアミが叫んだ。

興奮気味の花嫁を宥めながら、奥田が窺うような視線を向ける。





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