AEVE ENDING
(……友情が芽生えて見えるのは気のせいだろうか)
互いに互いを睨み合っているくせに、暑苦しい漢達の口元には充足した笑みが浮かんでいる。
愉しくて愉しくて仕方ない、さあ早く、もっと遊ぼう、という顔だ。
「さぁ、早く」
倫子が頭の中で考えていた言葉をそっくりそのまま繰り返したのは雲雀だった。
真醍は脇腹を抑えながら、雲雀のあからさまなお誘いに、にやりと唇の端を釣り上げる。
「あんませっかちだと女に嫌われっぞ。美人なのにもったいねぇ。つうかオマエ、ほんとに男?」
至極まじめに吐き出されたそれには、余計な言葉が一言も二言も余分に付いてきている。
「───なに?」
そんな真醍の何気ない態度に、雲雀の片眉がひくりとひきつった。
不愉快そうに聞き返した雲雀に、真醍は鼻の下を伸ばしながらだらりと続ける。
雲雀の不機嫌な声など、気にもならないらしい。
「顔だよ、顔。キレーな顔してんなぁ。俺ァ女が好きだけど、お前ならイケるかもしんねぇ」
今夜一晩、どぅお?
「…どこにイク気だ」
真醍のふざけた物言いに、隠れていた岩影から倫子は思わず突っ込んでいた。
ザシュッ。
ケヒヒ、と下品に嗤った真醍の顔のすぐ横に、いつの間に手にしたのか、雲雀が握る日本刀が突き刺さっている。
刀の切っ先は、真醍の股間ぎりぎりに突き立っていた。
「お~ぉ、コワコワ」
雲雀の視線が普段の千倍ほど冷ややかさを増している。
真醍の言葉の中に、NGワードが含まれていたらしい。
(…意外と単純なやつ。女呼ばわりが気に喰わなかったのか)
そんな雲雀を草葉の影から冷静に判断する倫子。
馬鹿らしいったらない。
「まぁまぁそんな怒るなや。無駄口はそろそろ止めにして、おっぱじめるべ」
そう言う真醍に、無駄口を叩いていたのはオマエだ、とは言わなかった。
「君のその節操のない口を閉じる案には賛成だよ」
オブラートに包んだ殺人予告は、波音がさんざめく浜辺に静かに響き渡った。