AEVE ENDING





窓の外は既に雷雨。
地上を激しく叩きつける様は、まるで神が放つ裁きの矢。

「奴らってのは、後からやってきた本島からの移民のこと。得体の知れないの研究者グループだった」

真醍の言葉に、雲雀が眉を寄せる。
島民達の口から何度も繰り返されるこの符号はなんだ。

「…また研究者?」

不可解な背景は、情報が足りなさすぎて推測することすら不可能だ。不透明な部分があまりに多すぎる。

「兼、人拐いだ。奴らが来てから過去十四名、島民が拐われてる」
「実験の一環で?」
「なんの実験かは知らんがな」

雲雀と真醍が話を進める中、倫子はひとり唇を噛んでいた。

(奥田の奴…)

あの腹黒い男の目的が、今やっと、解ったからだ。

(復讐の場を設けたってわけ?勘弁しろよ)

奴らにはもう二度と、顔すら合わせたくなかったのに。

「その研究者とやらの中に、アダムは居るの?」
「…いや、奴らは人間だけど」

真醍が歯切れ悪く舌打ちした。

「けど、なに?」

まるで解っているような瞳で、雲雀は真醍を見返した。
先の断片的な話を聞く限り、真醍や島民達には触れられたくない凄惨な歴史があるのだろう。
けれどそれを今、頑なに守っているだけでは話は進まない。

真醍は少し躊躇い、倫子と雲雀を交互に見た。
そうして雲雀の真っ直ぐな眼に貫かれて、諦めたように浅く息を吐く。

「奴らは、アダムの、狂信者だ」

それは、雲雀の予想した通りの答えだったのだろうか。
狂信される立場である雲雀の、その考えは。


「―――真醍、君はアダムとして大した力の持ち主だ。その能力は箱舟に在籍する生徒以上に、一アダムとして突出してる。暴挙を振るう移民達を、何故、征しようとしないの?」

矛先を変えて、雲雀は真醍にそんな疑問をぶつけた。
純粋な疑問でもある。
自分とある程度互角に渡り合えるこの「男」が、危険極まりない輩達を、何故のさばらせたままでいるのか。

しかしその純粋な問いかけは、真醍にとってもっとも胸が痛いものだった。





< 148 / 1,175 >

この作品をシェア

pagetop