AEVE ENDING



「…なにをしに?」

雲雀が言う意図が理解出来ず、倫子はもう一度雲雀に問い掛けた。
雲雀は何故わからないの、とさも言いたげに純粋そうに首を傾げて、そして、言った。


「―――人を殺しに」

これには、倫子も真醍もふたりして仲良く目を丸くしてしまった。
なに言ってんだコイツ。

「愚か者は排除しなきゃ」

しかし雲雀は、こちらの意見など聞く気もないらしい。

「この島に恩を売るのも悪くないし」

くすりと笑んだ微笑は、白々しいったらない。

(…もっとなこと言いやがって、暴れたいだけだろ)

「アタリ」

見とれそうな微笑を称え、雲雀は倫子に強制参加を促した。

「でも、人質が…」

何年もそれが原因で膠着状態にあったというのに、そんなあっさり―――。

「心配要らない。僕を誰だと思ってるの?」

その言葉に、真醍が顔を上げた。

「マジで!?俺も行く!」

キラキラと目を輝かせ、突然現れた救世主の手をぎゅうと力強く握る。

「…あんた、人質を無視する気満々でしょ」

にこやかな雲雀を睨み付ければ、本人ではなく真醍がこちらを向いた。
輝かんばかりのアホ笑顔だ。キモい。

「なぁに言ってんのタチバナちゃんてば!この雲雀くんがそんな事するわきゃねーべ!」

(どうだか…)

真意を求めて真醍から雲雀に視線を移せば。

「人質なんて犠牲にする為にあるんだよ?」

爽やかにそう言い放った。

「ほらみ?雲雀くんは……ってオィィィ!なんだこいつ!ナチュラルに人格が腐りきってね!?ナチュラルハイじゃね!?」

ショックを受ける真醍に、ナチュラルハイらしい雲雀は冷ややかな視線を投げ掛ける。

「煩いよ、猿」

ぎゃいぎゃい騒ぎ出した男二人に呆れつつ、溜め息しか出ない。

あのさぁ。

「規模もなにもわかんないとこに突っ込んでって、勝算があると思うわけ?」

私の訝しげな言葉に、雲雀はその柔らかな口許をゆうるりと弛ませた。


「僕を誰だと思っているの?」

その問い掛けに。

「自惚れスズメ」

とは、倫子。

「人格破綻者」

は、真醍。

それを聞いた雲雀が、かつてなく麗しい笑みを浮かべる。



< 150 / 1,175 >

この作品をシェア

pagetop