AEVE ENDING
「…なにをしに?」
雲雀が言う意図が理解出来ず、倫子はもう一度雲雀に問い掛けた。
雲雀は何故わからないの、とさも言いたげに純粋そうに首を傾げて、そして、言った。
「―――人を殺しに」
これには、倫子も真醍もふたりして仲良く目を丸くしてしまった。
なに言ってんだコイツ。
「愚か者は排除しなきゃ」
しかし雲雀は、こちらの意見など聞く気もないらしい。
「この島に恩を売るのも悪くないし」
くすりと笑んだ微笑は、白々しいったらない。
(…もっとなこと言いやがって、暴れたいだけだろ)
「アタリ」
見とれそうな微笑を称え、雲雀は倫子に強制参加を促した。
「でも、人質が…」
何年もそれが原因で膠着状態にあったというのに、そんなあっさり―――。
「心配要らない。僕を誰だと思ってるの?」
その言葉に、真醍が顔を上げた。
「マジで!?俺も行く!」
キラキラと目を輝かせ、突然現れた救世主の手をぎゅうと力強く握る。
「…あんた、人質を無視する気満々でしょ」
にこやかな雲雀を睨み付ければ、本人ではなく真醍がこちらを向いた。
輝かんばかりのアホ笑顔だ。キモい。
「なぁに言ってんのタチバナちゃんてば!この雲雀くんがそんな事するわきゃねーべ!」
(どうだか…)
真意を求めて真醍から雲雀に視線を移せば。
「人質なんて犠牲にする為にあるんだよ?」
爽やかにそう言い放った。
「ほらみ?雲雀くんは……ってオィィィ!なんだこいつ!ナチュラルに人格が腐りきってね!?ナチュラルハイじゃね!?」
ショックを受ける真醍に、ナチュラルハイらしい雲雀は冷ややかな視線を投げ掛ける。
「煩いよ、猿」
ぎゃいぎゃい騒ぎ出した男二人に呆れつつ、溜め息しか出ない。
あのさぁ。
「規模もなにもわかんないとこに突っ込んでって、勝算があると思うわけ?」
私の訝しげな言葉に、雲雀はその柔らかな口許をゆうるりと弛ませた。
「僕を誰だと思っているの?」
その問い掛けに。
「自惚れスズメ」
とは、倫子。
「人格破綻者」
は、真醍。
それを聞いた雲雀が、かつてなく麗しい笑みを浮かべる。