AEVE ENDING
(コワ…)
思わずたじろぐが、退いてたまるか、がんばれ倫子、橘倫子。
「君、僕のパートナーでしょ?」
首を傾げ、こちらに歩み寄ってくる修羅のご尊顔。
真醍はとうの昔に部屋の隅へと避難している。
「…だって行っても、役立たずじゃん」
慣れない地下で、ただでさえ能力下手な自分がついていったところで、なんの役に立つというのか。
「自分でそれを認めるわけ?」
ムカ。
「それとも、なにか理由があるの?」
睨み付けた雲雀の顔に、笑みはない。
「例えば、」
ただなにか、暗いなにかを孕むような、厭な無表情が倫子を見下ろしていた。
「───地下世界に、遭いたくない人間が居るとか?」
…鋭い。
「そんなんじゃない。面倒がいやなだけ」
ふてくされたように視線を落とした姿は、自分でも情けなく思える。しかしこれぐらいして雲雀の気が削がれるなら、いくらでもする。
そんな倫子に苛立ったように、無表情に更に冷ややかさを際立たせる、雲雀。
我儘を口にしていると自分でも理解しているだけに、目の前の男の強引さが正当に見えてくる。
(チクショー)
「駄々こねて許されるなんて思ったら大間違いだよ?」
まるで我儘なこどもを諭すような口調が、更に、むかつく。
「思ってねーよ!」
大体、私なんかが駄々こねても誰も受け入れてくれないし。…卑屈だな、私。
頑としてその場を動こうとしない倫子に、雲雀は呆れたように溜め息を吐いた。
「仕方ないね」
「…え、」
諦めて、くれた?
訝しげに見上げた雲雀の顔にはしかし、倫子が希望したものとは反する、ふてぶてしさを含んだ微笑があった。
「君が捕まっても、助けてあげる。約束するよ」
「……」
「ほら、早く」
「…ちょっと待て」
さぁ出発だ、と言わんばかりに入り口で待つ真醍に向き合った雲雀は、更に粘る倫子に苛立ちを隠さない。
「まだ、なにかあるの?」
眉間に皺を寄せ、窓際にへばりつく倫子を早くしろと見遣る。
しかしこちらも退くわけにはいかない。
「…あんた、今の今まで私が奴らの手に落ちても助ける気がなかったってわけ?」
「…君を助けて僕に何かメリットがあるの?」
私がなにを言っているか全く理解できない、と言いたげな無垢な顔。