AEVE ENDING
なにもかもが嫌になる瞬間。
きっとこういう時を言うんだ、と確信した。
「早く」
―――ぐい。
我慢の限界だったらしい。
苦労を知らない女性のような手が放心していた倫子の手首を掴み、乱暴に引き寄せる。
「え、」
その腕を振り払う暇もなく、雲雀の腕が腰に回った。
―――瞬間、脳天が揺れた。
(ぐ、ぇ)
あの感覚だ。
細胞のひとつひとつが破壊されて、運河の一部になったかのように流れていく。
溶け合って一緒になってたまに別れたりして、際限ない果てしない空間を一粒一粒の欠片になって飛んでゆく。
「…っ、ぃ」
そして、再構築。
(了承もなく、テレポートなんかすんじゃねぇよ)
アダムとして陰性である自分は、同族である彼らの力にすら屈してしまう。
(ぃ、てぇ…)
胎内を直に廻る、雲雀の突き刺さるような能力。
体中に張り巡らされた血管という血管を、その強力で傍若無人な力が駆け巡っていた。
操られている。
完全な、万能なる力に。
(───喜べ、お前は神に近づける)
(我々の手で、お前は神に近しい存在となるのだ)