AEVE ENDING
「真醍を連れてこなくて良かったかも…」
人質になった島民達の最悪の結果とやらを想像し、倫子がそう呟く。
―――まぁ確かに、扱いが面倒だったかもしれない。
空っぽの牢を更に過ぎれば、通路に出るであろう扉が見えた。
小さな覗き穴からは、微かな光が漏れている。
そこの通路は使われているのか。
「牢が此処だけという確信もない。案内役に真醍を連れてくるべきだったね」
裏付けるわけではないが、すべて事実だ。
地下世界というものは大抵迷路感覚で、初めて足を踏み入れた者が迷うのは必須。
案内人がいればわざわざ透視をする必要もない。
倫子はあぁそうか、と小さく頷き、少し考えてから雲雀を見上げた。
「行ってくれば」
「どこに」
真摯な眼に映るそれを、解ってて、訊いた。
「真醍、連れてきなよ」
じゃなきゃ、埒があかない。とその眼は語る。
不機嫌に鼻を鳴らした倫子は、扉の覗き穴から外を確認し、再び雲雀に振り返った。
ここから逃げだしたくて仕方ないって顔してるくせに。
「僕が居なくて平気なの?」
「…別に、子供じゃないんだから」
精一杯の強がり。
ばかなひと。
「諦めが良いね」
「誰のせいだよ」
「さぁ、誰かな」
しれ、とかわせば、倫子の不愉快そうな声が脳内に響いてきた。
(ムカつく)
「…君、オープン過ぎて心の声で会話出来てるよ」
本当のことを言っただけなのに、押し黙ってしまった。
「とにかく、すぐ戻るけど」
その言葉に倫子が首を傾げる。
訝しげな表情を横目で見ながら。
「下手に僕の獲物を横取りしようとしたら、殺すよ?」
「……そこかよ!心配してくれてんのかと思って期待したわ!ふざけんな!」
随分な責任転嫁だったが、こんな世間話で時間を潰すわけにもいかない。
雲雀はそれを相手にせず、さっさと背中を向けた。
―――が、すぐ振り向いた。
「じゃあね」
まるでさよならと手を振るような仕種で倫子の頬をぶん殴って――あ、口が切れてるほう殴っちゃった。まぁいいか――雲雀はテレポートした。