AEVE ENDING
―――その頃。
ジャングルを散策中、縦穴に落ちた二人は。
「なんですの、ここは」
「知るか。つかお前、なに見事に落ちてんだよ。コントもんだったぞ」
「お黙り!今度それを口にしたら八つ裂きにしますわよ」
落下時、アダムとしての能力──物体を一時的に無重力化する力を使って難なく着地しようとした朝比奈の上に、数秒差で落ちてきた武藤がタックルをかました。
無傷で着地できたはずの朝比奈は石畳に腰を強かに撃ち付け、脚も擦りむくはめになったのである。
そういうわけで朝比奈は苛立たしげに武藤を睨み付けると、カツカツと進めていた歩みを止めた。
「大体、なんであの穴がこんな地下迷路に続いてるんですの!?」
わんわんと反響するヒステリックな声に耳を塞ぎつつ、武藤はまるで兄ぶるように肩を竦めて見せた。
「それを今から探求しに行くんだろ」
武藤は軽やかな足取りで先へ進む。
冒険に目がない男の子特有のその楽しげな様子に、朝比奈の苛々は募るばかり。
「冗談じゃありませんわ!こんなジメジメして得体の知れない地下で、何が見つかるって言うんですの!?」
「だから、それを探求しに行くっつってんだろーが」
わかんねぇやつだなぁ。
ぎゃあぎゃあ噛みついてくる朝比奈を適当にあしらいつつ、かれこれ一時間弱は歩き回らせている。
会話に誤魔化されてちゃっかり歩かされていることに、朝比奈は気付いていない。
(我儘だけど、あしらい方が単純でいい)
本人には決して言えないが、武藤は内心でそう呟き、ぷっとほくそ笑んだ。
(…しかし、この地下通路、大したもんだな)
ジャングルのど真ん中に穴が空いていたというのもわけが解らないが、まさかその穴がこんなところに繋がっているとは。
完全な形を保った状態の地下世界。
掃除はされていないが、整備はされた立派な地下空間である。
人二人分の幅の通路、頭上には絶滅したと思っていた豆電球が数メートルおきに設置されている。
しかもこの通路は縦横無尽に枝分かれされていて、今の今まで勘の赴くままに進んできた。
(…下手したら帰れねーな)
武藤がそんな恐ろしいことを考えているとは思いもしない朝比奈が、恐る恐る後を着いてくる。