AEVE ENDING
「!」
武藤と朝比奈は慌てて通路の脇へと身を寄せた。
柱の陰に身を寄せ、浅く覗き込めけば、猫背に白衣を着られた男が二人、通路に出てきた。
(…医者、にしても島民じゃねぇよな?いや、島民なのか?)
なんの情報もない為、下手に接触するわけにもいかない。
なによりその痩せた背中は随分と異様な空気を醸し出していて、できればお近づきになりたくない。
「───しかし、アレをもう一度目にすることが出来るとは…」
「まさか生きていたとは思わなかったな。アレになった時点で、廃棄した筈だが」
武藤達とは逆の方向へと向かいながらボソボソと繰り出される会話は、なにを話しているのかわからない。
「奥田の仕業だろう。奴はアレを気に入っていたからな」
「フン…、一人だけ追放を免れた裏切り者めが」
そう忌々しげに吐き捨てた白衣の男達は、足音もなく通路の先へと消えてしまった。
(…奥田?)
(西部の保健医と同じ名字ですわ。…関係があるのかしら)
("アレ"っつうのも気になるな)
───アレ、とは。
(モニターには雲雀さんが映ってたんだろ)
(えぇ…、でも、雲雀様が?)
不可解な断片ばかりで、なにひとつ真実に繋がりそうもない。
朝比奈と武藤は顔を見合わせ、とにかく、雲雀もこの地下に居るならば合流しよう、という考えに至った。
―――しかし、一体どこに居るのか。
自分達の位置すら把握できていないのだから、見当をつけようにもつけられない。
(奥田先生のように、人の気配が探れたら良かったんですけど)
(今はそんなこと言ったって仕方ねぇだろ…)
とにかく様子を見て、あの部屋に入れればいいのだが。
二人が出ていったということは部屋に残るのはあと一人。
(…野蛮な真似は反対ですわよ)
武藤の頭の中に描かれた突破口を見透かしたかのように、朝比奈は唇を尖らせた。
愛らしい瞳に浮かぶ非難の色に、少しだけ武藤が怯む。
(…んなこといっても、仕方ねーよ)
そう言って武藤が物陰から飛び出そうとした瞬間、なにやら件の部屋が騒がしくなった。