AEVE ENDING




「───おい、新しい侵入者だ」

侵入者?
その言葉に慌てて身を翻す。

(…バレたか?)

息を殺して様子を窺うと、部屋に残っていた一人の男が扉から姿を現した。
顔は見えないが、やはり白衣を着た、姿勢の悪さが目立つ禿げあがった男。
その男の言葉に、部屋を出ていった男二人も引き返してきた。

「男が二人だ。箱舟東部の制服を着ている」

男の言葉に、引き返してきた男達は部屋に再び入っていってしまった。
朝比奈と武藤は顔を見合わせる。

───鈴木と原田。
どこに居るのかと思えば、あっさり得体の知れない手に落ちてしまったようだ。

(どうします?)
(どうしますっつってもな…。あ、テレパスがあるじゃん。雲雀さんに送ってみろよ)

ナイスアイディア。
灯台もと暗しとはまさしく。
日常に馴染みすぎていて活用することを忘れていた。

(…無理ですわ)

顔を輝かせる武藤に反し、朝比奈は不機嫌な表情で地面を睨みつける。

(雲雀様にテレパスは通じません。誇り高い方ですから、他人の声に侵害されたがらないのです)

そんなまさか。嘘だろ。

(試しにしてみろや)
(無理です。貴方も試してご覧なさい。跳ね返されるのがオチですわ)

朝比奈の言葉は武藤を絶望へと突き落とす。
万策尽きた。
せめて雲雀達が近い距離に居てくれればいいのだが―――。


反アダム勢力。

巨大な地下空間。

白衣の男達。

得体の知れない「北の島」は、自分達の想像以上に薄気味悪い闇を孕んでいるらしい。






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