AEVE ENDING
「我らを、殺したところで、計…画は、中止にならぬ…」
息も絶え絶え吐き出す男の言葉に、雲雀の眉間に皺が寄る。
聞き慣れない言葉。
不透明な策略、計略。
「…計画?」
「ぁ、…がっ……!」
雲雀の訝しげな声など届いていない倫子が、更に容赦なく男の首を締め上げる。
雲雀は舌打ちをして、倫子に近付いた。
男の首に喰い込む倫子の爪には、赤黒い血が滲んでいる。
「橘、まだ、だめ」
制止するよう、倫子の耳元に唇を寄せた。
このまま殺しては、知りたい情報がなにひとつ得られない。
しかし倫子にはその声も届いていないらしい。
ただ無我夢中で、隙間なく男の首に吸い付く腕には未だ容赦なく力が込められている。
「真醍、人質を」
仕方ないとばかりに溜め息を吐き、雲雀は呆然とふたりを見ていた真醍を振り向いた。
「え……?あ、そうだった!」
言われた真醍はばちんと手を叩き、早々と部屋を出て行こうとする。
しかし扉を潜る前に、再び部屋を振り向き省みた。
「なに?」
その不可解な行動に、雲雀が不機嫌そうに声を低くする。
「…や、ここ、お前一人で平気かな、って」
首を絞められ、今まさに殺されようとしている男に、我を忘れ、男ひとり殺しかけている女がひとり、そして死体が一体。
考えてみるとややこしいこの空間に、雲雀一人残していくことには気が退ける。
「…いいから、早く行きなよ」
そんな真醍に呆れたような視線を向け、雲雀は犬を追い払うように力なく手を振った。
「あ、ついでにあの間抜けな達も」
「間抜け…?」
あれだよ。
雲雀の視線がモニターへと移る。
あぁ、雲雀達の仲間か、と確認した真醍は元気よくイッテキマスと叫び部屋を後にした。