AEVE ENDING




「…なにが、足りないの」

寂しさ紛れに、解りきったことを吐いたりして。

「もっと痛めつけたかったんじゃないかと、思って」

倫子から離れ、雲雀は壁に凭れたまま肩を竦めて見せた。

(…止めた癖に)

「そうだね。僕が止めたんだけど」

だからこそ。

「気になって、」

―――嘘吐け。
淡白な微笑を浮かべながら、私を嵌めようとする男。


「馬鹿にしてんの」

嗤ってるくせに。

「馬鹿みたいに我を忘れて、人一人殺そうとした私を、あんたは愚かだと嗤ってる」

それはそれは、滑稽だったことだろう。
男の軽い挑発に我を忘れて、醜く、自身のこの手を汚した私の姿は。


「ねぇ、雲雀」

―――あんたは、何を思った?

白磁の人形のような顔が、こちらを見る。
なにも言わない私を訝しんでいるのか。

(…どうでもいいだけかな)

多分、そうなのだろう。



「なんでもない…」

真実を知ったらあんたはどうするだろう。

後悔するだろうか。
嫌悪するだろうか。
傷付くだろうか。


(―――ねぇ、雲雀)

それとも。







「雲雀様っ!」

バタン!
びく!

耳鳴りがしそうなほど甲高い叫び声と、扉が開く音に驚愕して思わずその場で跳ねた。

「…げ、」

現れたのは朝比奈と武藤。
二人とも体中に土くれを付けているが、怪我はないらしい。
朝比奈に至っては相変わらずのようだ。壁に凭れた雲雀に素早く駆け寄り、再会できていかに嬉しいかを必死に伝えている。

(…ラブビーム発射)

武藤は部屋を見回し、惨殺された死体を見付けて顔をしかめていた。

(朝比奈の奴…、死体は眼中なしだな)

気付いた時、気絶しなきゃいいけど。

モニターを見れば、拘束されていた鈴木や原田も真醍によって解放されているところだった。



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