AEVE ENDING
倫子が話を進めれば進めるほど、朝比奈の顔色は悪くなる。
(…形勢逆転?)
しかし状況が把握できないので、手離しで喜ぶこともできやしない。
しかし。
「―――ブッ」
そんな朝比奈を見ていた武藤が我慢ならんというように盛大に吹き出した。
「ギャハハハハハッ」
そしてそのまま笑い転げる。
「武藤!」
朝比奈が真っ赤な顔で怒鳴りつけるが、武藤の笑いはとまらない。
とまるどころか激しくなっている。
理解しがたいが、二人の間になにかしらあったらしい。
仲睦まじくてよろしいことだ。
「穴に!落ちたんですわ」
「は?」
なんかもうどうでもいいや、と倫子が溜め息を吐いた時、必死になっていた朝比奈が、突然、叫んだ。
「穴?」
「そうです!穴ですわ!」
「ぶっは……っギャハハハハハ!」
「穴」に反応して更に高まる武藤の爆笑っぷり。
「…誰が落ちたの」
倫子が訊けば。
「む、む、武藤に決まっていますでしょう!…いい加減にお黙り!武藤!」
笑いやまない武藤を余所に、真剣な顔で叫ぶ朝比奈。
あぁ、落ちたのは朝比奈なんだろうな、という事実は想像に固くない。
「で、なにしてたの」
結局、誰が落ちたか落ちなかったかなんて知ったこっちゃない。
問題は。
「え…?」
更に追求されるとは思わなかったらしい朝比奈が、不思議そうに顔を傾げた。
「穴から落ちたんなら、さっさと出りゃ良かったじゃん。あんた跳べるでしょ」
「……そ、れは」
私の言葉に、朝比奈の視線がぐらりと揺らぐ。
(まさか目的もなくさまよってましたとは言えませんわ…)
「大方、そこの馬鹿が冒険しようとでも言ったんじゃないの」
カルテを眺めていた雲雀が口を出す。
馬鹿、とは笑い過ぎてとうとう噎せだした武藤のことだろう。
腹を抱えて床にうずくまり打ち震えている姿は、確かにただの馬鹿、としか形容できない。
「そうですの!さすが雲雀様ですわ!なんでもお見通しですのね!」
お見通しっていうか、少し考えれば解るっていうか…。
雲雀が自分達の会話に入ってきたことが嬉しかったらしい。
大きな目をきらきらさせて、朝比奈は顔を赤くする。