AEVE ENDING





「西部箱舟の朝比奈会長から手紙が届いております」

事務的に告げられた男子生徒の言葉が終わる前に、雲雀は形のいい口を開く。

「要らない」

これには男子生徒も驚いて、焦燥を滲ませる。

「しかし、セクション関連の話では?」

差出人は西部箱舟のトップだ。
いくら格下の箱舟相手とはいえ、合同授業は明日に迫っている。なにか重要な書面を無碍にしたとあっては、こちら側が泥をかぶる羽目になるのだ。

「聞こえなかったの?僕は処分してと言ったんだけど」

足も止めず、雲雀は淡々と続けた。

「…っ、失礼しました」

背後の男子が怯えて身じろぐのを感じて、満足げに嘲笑を浮かべる。
結局、箱舟一優秀な東部のアダムだろうが西部のアダムだろうが、中身は役立たずの腑抜けばかりだ。

新人類として生まれたことを鼻に掛け、無能な人間相手にくだらない優越感を抱いている。

最高を誇る東部の、幾田桐生の権威を笠に着て、まるで自らも大きくなったかのように錯覚する愚か者達。


(あぁ…、本当に面倒)

西との合同授業。

今回が初めてではないが、会長に就任してからは権限と持ち前の傲慢さを駆使して全て回避してきたというのに。
しかし今回ばかりは数ヶ月にも及ぶ長期に渡る特別セクションだ。流石に代表がサボるには無理があった。
公的理由の馴れ合いほど、性質が悪いものはない。

希少価値とされる新人類アダムだからこそ。

妙な結束感を漂わせる人間関係が、そのくせ箱舟違いで敵対を示すようなその貧弱な精神が、雲雀は大嫌いだった。

それこそ、ぐちゃぐちゃに原型がなくなるくらい殴り通して、跡形もなく焼き払ってしまえるくらいには。






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