AEVE ENDING






「───読んだの?」
「流れてきたんだよ」

倫子はまるでその言葉を避けるように、老婆が抱き上げている子供に手を伸ばした。
痩せこけた頬に触れれば、擽ったいのか、無意識に眉間に皺を寄せる。
衰弱は酷いが、感覚はまだ残っている。大丈夫だ。


(…はぐらかす気?)
(…私のことになんか興味ないって、あんたが言った)
(確かに)
(ほっといてよ)

頼むから。

これ以上、雲雀の声を聞いていたくないが為に、倫子は口を開いた。


「…この子にはすぐに食べ物は与えないで。数日はこのカプセルを一日一錠、少し回復してきたら流動性の柔らかい食べ物を用意してあげて。それから水もたっぷり摂らせて。温かい寝床も。真醍、この子の親は?」

一気に捲し立てたことに呆気に取られていた真醍が、名を呼ばれてはっとする。

「…あ、今、城に呼ばせてる。寝床の準備も済んでる」
「わかった」

すぐに回復するわけではないが、徐々にだが良くなっていく筈だ。
飲ませた薬も一日に一度の服用なら依存にはならない。

老婆から子供を抱き上げると、安堵したように眉尻を下げている彼女の顔を倫子は覗き込んだ。

やさしいひと。


「おばあちゃん、おばあちゃんももう休んで。この子は、大丈夫」

安心させるように微笑めば、老婆は張りつめていた息を吐いて、小さくうなだれた。


「雲雀、何度もごめん。テレポート…」

先程のこともあり、恐る恐る雲雀を見れば。

「いいけど、高いよ」

凶悪な美笑を浮かべて、倫子を見下ろしていた。




< 190 / 1,175 >

この作品をシェア

pagetop