AEVE ENDING





『…やっぱり、知っていたの』

なにもかも解っているくせに、白々しいなぁ、雲雀ちゃん。

「知ってたよぅ。他の先生には内緒ね。俺以外このことは知らないから」
『ひとり捕らえたけど、島じゃ持て余すからそちらで引き取って欲しいとのことだよ』

神の麗しい声を聞きながら、奥田はうどんを啜る。

(そうか、…接触したか)

確率は低かったが、どうやら思惑通りに展開したらしい。

(皮肉なもんだ)


「いいよ。君等を迎えに行くとき、ついでに引き取ってあげる。…あとの二人はどうしたの?」

解っていながら訊くなんて、大人は無駄が好きだよなぁ。


『死んだ』
「……殺したの?」


───倫子が?



『島の頭首がね。……橘は、殺しかけただけ』

生意気なガキ。
こっちの頭のなかを見透かしてやがる。

『詳しい話は帰ってからするよ。出来ればすぐに帰りたい』
「別に良いよ。迎えに行ったげる。島の人間と仲良くなっちゃったらミッション意味ないし」
『仲良くなったのは橘だけだよ』
「アレ、そーなの?雛ちゃんたちは?」
『ひなちゃんって誰?』
「……」

いいや、なんかもうオジサン疲れちゃった。

とりあえず迎えの時間だけ伝えて電話を切ろうとすると。


『―――ねぇ』

呼び止められた。

『…橘の秘密を、あなたは知っているの?』

乞うていうより、ただ無感情に台本を読んでいるだけ、声だけなら。

(あぁ、電話なのが勿体ねーや)

その言葉を紡いだお前の面を拝んでやりたかった。


「…気になるの?」
『アレだけ意味深に研究者達との仲を見せ付けられれば、必然的に』

それで、充分だよ。

これを尋ねるということは、電話越しの神は重要な真実はなにひとつ知らないということだ。

(ジジイ共も倫子も、うまく隠したのか)

もっとも、追放されたジジイ共は隠すために隠したわけじゃなかろうか。




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