AEVE ENDING
(…普通はあんな血だらけで愛想のいい女には、近付かない筈だけど)
しかし無邪気な子供達は臆することなく倫子にじゃれた。
本人は血濡れの姿を気にしていたが、おかまいなしに構ってくる子供達を邪険にもできず、やはり楽しそうに笑っている。
(───あぁ、子供同士だからか)
雲雀の納得がいったところで、子供達は倫子を連れて部屋を出て行った、というわけである。
「着替えとシャワー用意したし、探してくっかな」
真醍が立ち上がる。
「下手にアダム嫌いの奴らに見つかれば、またなにか言われるだろうし」
研究者達から人質を取り返した恩在る友人というかたちで城に招き入れたはいいが、それで長年の確執がなくなるわけではない。
それにあの倫子の性格を考えると、騒ぎが大きくなりそうで心配だった。
「それがいいだろうね」
「雲雀も行かね?話あんじゃねーの?」
立ち上がった真醍が雲雀を見た。
(…奥田との話は、テレパスで飛ばせば済むんだけど。……まぁ、いいか。朝比奈達には橘を使ってテレパスで送ればいいし)
―――この時の雲雀は、パートナーの倫子が広範囲テレパスがとてつもなく苦手なことを知らなかった。
真醍に続き、雲雀は部屋を後にした。
「どこ行ったんかな」
吹きさらしの廊下を歩きながら真醍が呟く。
眼下は急降下の崖で、なんの傷害もなく海へとダイブだ。
地下に潜る前から降り始めていた雨は激化し、バチバチと城の外壁を打っていた。
「居場所なら解るよ。…ここからそう離れてない」
倫子の解りやすい氣を辿った雲雀が顔をしかめた。
「浜みたい…」
ぽつりと呟いた雲雀のそれに、あ、と声を上げる真醍。
「ガキ共がいつも遊んでる浜か。あるある!」
こっち、と真醍が進めば、すぐにその浜は見えてきた。
「あるって…外、雨だよ?」
雲雀の呆れたような声は強い潮風に掻き消されて、誰の耳にも入らなかった。