AEVE ENDING
小さな入江になったそこは、まさしく子供用に誂えたようないい遊び場だった。
しかし当然ながら屋根など存在しない。
天候の悪い今、勢いの増した雨が砂浜を容赦なく叩きつけていた。
城の骨組みに沿うように小さな電球がぽつりぽつりと灯されていたが、その明かりは今は雨で掠れて見える。
「いるの?」
まだ昼過ぎとは言え、薄暗い浜に子供がいるとは思えない。
いや、この場所に導いたのは確かに自分ではあるのだが。
雲雀が訝しげに吐き捨てた時、浜の端から笑い声が響き渡った。
「オネーチャン!こっちぃ!」
見れば子供達数人と走りまわっている倫子が飛び出してきた。
「キャーッ!オネーチャン!鬼がきたよ!」
「うわっ駄目だっておんぶは!ちょ、ちょ、ちょっ」
「オネーチャン逃げてー」
「よっしゃ任せろ!」
小さな女の子に背中をよじ登られながらも鬼から逃げる倫子は、やはりというか当然というか、完全に濡れそぼっている。
「元気だね…」
「イーナー!鬼ごっこ!」
呆れた顔の雲雀と、目を輝かせる真醍。
「あれが楽しそうに見えるの?」
雲雀の諦観した言葉もなんのその。
真醍は羽織っていた派手な着流しを水溜まりのできた浜に投げつけると、ガオーと吠えながら鬼ごっこの輪へと入っていった。
倫子に「ギャァァアッ猿が来たー!」と叫ばれ、必然的に猿が鬼の鬼ごっこが開始される。
雨の中はしゃぐ子供とバカ二人を眺め、雲雀は溜め息を吐いた。
そうして部屋に戻ろうとした雲雀を、笑い声の倫子が呼び止める。
「ひばり!」
タイムーと叫びながらこちらに駆け寄ってきた、血濡れの小さな姿。