AEVE ENDING
「照れんなって。相談ならいつでも乗ってやるよ?このボ·ク·が」
卑しい下弦三日月の目で、ウザイことこの上ない態度で雲雀に詰め寄る。
(…いい加減、殺したい)
雲雀がそんな物騒なことを考えているとは露知らず、真醍の三日月お目めはもとには戻らなかった。
「ま、意地っ張りな坊ちゃんにはまだ俺の指導は早いかな?ん?」
ニヤニヤ。
ふざけきった顔が憎たらしいったらない。
―――殺そう。
雲雀がそう決意した時、奥田を乗せた船が港に到着した。
「やーやー!みんなお疲れサン」
船上からこちらを見下ろす奥田たきおの姿に、倫子と雲雀以外の生徒が姿勢を正す。
「全員、無事でなにより。収穫もなくはない。さぁ、北の島の皆さんにご迷惑かける前に帰りますよー。散らかしたゴミはちゃんと持って帰ってね」
まるでピクニック気分だ。
そんな楽しいものでもなかったが、朝比奈達は素直にその言葉に従い、ぞろぞろと船に乗り込み始めた。
しかし全員が船に乗りきっても、雲雀はまだ地上へと残ったまま、この島の頭首―――真醍となにやら話をしている。
「雲雀くーん、置いてっちゃうよー」
そんな雲雀に奥田が声高らかに催促した。
それを合図に、雲雀は身を翻す。
甲板からなんとはなしにその光景を眺めていた倫子は、雲雀と真醍を交互に見た。
「なんの話、してたの?」
船に乗り込んできた雲雀に尋ねれば。
「君にはわからないような、難しい話」
馬鹿にされた。
(…いますぐ海に落ちろ)
口には出せないので、内心で呪ってやる。
「この冬に泳ぎたいなんて物好き。手伝ってあげるよ、橘」
が、人生はそう甘くなかった。やはり筒抜け。
爽やかな微笑を惜しげもなく向けられ、倫子は青ざめた。
「わーうれしいなーほんと泣けてきちゃうー雲雀くんそのまま海の藻屑になって二度と私の前に現れないでほしいなー」
互いに互いを嘲笑うかのような笑みを湛えながらも、睨み合う二人。
不機嫌な空気が振動するように、二人の間を漂っている。