AEVE ENDING





「…美味くもないもんに歯なんか立てるな、この悪食が」
「…いつも、空腹でね」

ペロリ。
倫子から顔は見えなかったが、明らかに舌舐めずりしながら雲雀は答えた。


「ねぇ、話さないの」

爪の先まで整った綺麗な指が、倫子の背筋を掠めるように撫でていく。
全身に残る痕のひとつを擦られて、鳥肌が立った。

(…悔しい。全然、隙が見つからない)

手足は自由であるのに、抵抗をうまく反らされている。

「話すことなんかねえよ!」
「そう?」

雲雀の笑うような返答が、倫子の体を濁した。

(…なら、訊いてあげようか)

脳髄に響いた音。
意図を理解して、押さえつけられた体が跳ねた。


あの、研究者達との関係は?

(なにをされたの?)

第二の君って、なに?

(ねぇ、橘)

きみのおりじなるって、だれなの。



(―――君は、選ばれたんだ)

(神に近付く許可が下りたんだよ)

(ほら、怖くないから、おいで)

(お前はなり損ないだ)

(醜い失敗作め)

(まさかこんな化け物になるなんて───)



助けて。



(うちに、帰りたい…)




『―――姉ちゃんは、もういないんだよ』


助けて。


(顔も、ちがう)

(お前は、ちがう)





―――たすけて。






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