AEVE ENDING
「まぁ、君の質問に答える前に、ちょっと話を聞いてもらわなきゃならんのだけど」
奥田は胸ポケットから捻れた煙草を取り出した。
茶を片手に、煙草を咥えながら足を組む。
「さぁて…、何処から話そうか───」
鼻に掛けていた眼鏡を外し、男はゆっくりと口を開いた。
「―――それを、信じろっていうの?」
思っていたよりも簡潔に解りやすく話を終えた奥田に、雲雀は一言そう告げた。
「やっぱ信じてくんないよね~、だよね~」
俺だって信じねぇもん、なんてふざけきった態で。
奥田はたっぷり一時間を使い、本題について補足しながら雲雀に事細かに説明した。
人類支配を目的とした全人員をアダムで形成する闇組織の存在。
彼らの地球再生への異常な執着。
地球破壊は傲慢な人間の諸行だとして、各地の貧困エリアで被害が実際に多発しているということ。
更にこの組織に国の重鎮が関わっているらしいこと。
北の島で起きた謎の研究は、この組織によるものだろうということ。
―――それから。
その組織が、「修羅」を狙っているらしいこと。
「知ってるよ」
話を終えた奥田は、雲雀の言葉に目を丸くした。
「え、…知ってたの?」
そう問い掛けてきた間抜け面に向かって、雲雀は小さく頷く。
雲雀が寝耳に水だと驚愕することでも期待していたのか、奥田の眼には期待はずれのやるせなさが浮かんでいた。
「それらしき奇襲には何度か遭ってるからね。刺客はみんな死んじゃったけど」
まさか一介の保健医がその事実を嗅ぎ付けてるとは思わなかった、と雲雀は咥内で独りごちる。
「…殺ったの?」
奥田の眼は相変わらずやる気のないままだったが、思いのほか真正面から雲雀の視線を受け止めた。
けれどその眼は、生気を伴わない死んだ生物のようで、男の不気味さを引き立てている。
「貴重な情報源を殺すわけがない。皆、捕らえた途端、自害したよ」
刺客の徹底した覚悟に呆れたのか、奥田は肩を竦めた。
「切羽詰まってんのなぁ」
そう暢気に嗤い、熱い茶を啜る。
そして一区切り入れるように、奥田は大袈裟に息を吐いて雲雀を見た。
腑抜けた面のまま、眼だけが妙に浮き出て見える。