AEVE ENDING
―――手を、離さなければ。
硬直したように動かなくなってしまった手を離そうと、意識的に力を込める。
電流を流されていたように動けなかった指先がひくりと痙攣して、やがて倫子から離れた。
(……ぅ、あぁあああぁ…、ああぁっ)
―――ゾ…。
離れる瞬間の、憧憬。
しかし指が離れた途端、辺りは静寂に包まれた。
神経を犯す他人の記憶はもう流れてはこない。
眼下では相変わらず規則正しい呼吸を繰り返している倫子の姿があった。
それが現実である筈なのに、今まで観ていたビジョンがあまりにも鮮烈過ぎて、夢と現を疑う。
「…、…は…」
思わず、息が漏れた。
指先が離れる寸前に聞いた、まるで刻み込むように脳に流れ込んできた悲鳴が、今だ耳にこびりついたまま。
背筋を一筋の汗が伝う。
鳥肌を立てた肌が、ぶるりと震えた。
「……橘?」
息が、停まりそうになった。
今のは、一体なに。
雲雀のとても小さな問い掛けに、応える者はこの場には居なかった。
―――熱い。
ああ、どうして、こんな。
苦しい。