AEVE ENDING
「見ろよ!最悪じゃん!これじゃねこまんまも満足に食えやしねえ!」
「僕のせいなの?」
雲雀が不思議そうに首を傾げている。
その妙に愛らしい仕種に、一瞬呆けたが。
「……ったりまえだろうがボケェエエ!」
「大体、唇はもともと切れてたじゃない。頬も北の島で殴られた。今朝、反動がきたんだよ、きっと」
「悪化させたのお前だろうが!こっちが寝てる間に勝手に人で暖とりやがって!人様の温もりが恋しいお年頃かコラァ!」
血管がぶち切れそうなほど怒(いか)れる倫子に、冷然と席に着き朝食を取る雲雀。
しかし、アミが気になったのは。
「……一緒に寝たの?」
ぽつり。
まるで独り言のように吐き出されたそれ。
「───え、」
アミの言葉に、怒鳴り散らしていた倫子が固まる。
雲雀はただ黙って朝食をとり続けているが、倫子はそう堂々とはしてられなかった。
見る見るうちに真っ赤になっていく倫子の顔に、アミはやはり呆気に取られてしまった。
付き合いの長いアミですら、彼女がこんな反応を示すのを初めて見る。
雲雀もそれに気付いたのか、行儀良く箸を持ったまま倫子を見上げた。
アミと雲雀の視線が一気に集中したことで、更に倫子の赤みが増す。
逆上せて倒れそうである。
「……ち、ち、ちが、」
真っ赤になりながら必死にちがうと口走る。
正直、信憑性もなにもない。
「…まさか、僕が寝てる間になにかしたの?」
倫子の異常な反応っぷりに、思わず雲雀は問い掛けていた。
雲雀自身、そこまで悪気はなかったのだが、混乱している倫子に対してここまで意地の悪い質問もない。
「な…!?」
怒りと困惑がない混ぜになった表情の倫子に、アミは吹き出すのを堪えるので精一杯だ。
我が友人ながら面白い。
そこまでバカ正直だったとは知らなんだ。
「…っあんたが勝手に私のベッドに入ってきたくせに、なんで私が責められなきゃなんないわけ!?」
真っ赤な顔でテーブルに拳を落とし、倫子は食堂を出て行ってしまった。
その馬鹿でかい声に、食堂で朝食を取っていた者全員の視線が雲雀とアミに集まる。
完全に雲雀が変態扱いされる形だが、雲雀はさして表情も変えずに食事を続けていた。
しかし。
「…あとで殺そう」
雲雀のぼそりとした囁きは、近くに居たアミにも聞き取れなかったとか。