AEVE ENDING
ムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつく…!
倫子は怒っていた。
なにに対してかなんてもうよくわからない。
アミに指摘されて妙に恥ずかしくなってしまった自分にも、それを顕著に表現してしまった自分の顔にも、そしてクソスズメにも!
(…だってあれじゃ、本当になにかしちゃったみたいじゃん、無罪なのに!)
今頃、きっと食堂で倫子は痴女扱いだろう。
落ちこぼれの称号にくわえ、まさかの変態女。
(…さいあくだ)
ただ、雲雀の麗しの寝顔だけは本当に綺麗だったわけで、アレはちょっと、あの……困る、色々と。
その後ろめたさもあり、倫子はかっかかっかと腹を立てるしかないのだ。
「…あ、」
荒々しく歩き続けていた足を止め、倫子は青ざめた。
なんたること…。
大変なことに気付いてしまった。
なんという失態!屈辱!
(この私が照れるくらい綺麗で貴重な寝顔を)
「写真に納め忘れた…」
手近にポラロイドがあったのに。
雲雀の寝顔なら五千円…いや、それ以上は軽い。
「ああああっ…!」
なんて絶望的。
墓穴を掘ってあれだけ恥ずかしい思いをしたのに。
「畜生…!」
悔しさのあまり拳で壁を殴った。
―――痛い。
自分が鳴いた。
倫子が壁を殴って鳴いている頃、その上空には二つの人影があった。
―――西部箱舟。
新人類アダムが収容され、その未知の能力を開発し、存在自体を保護、監視する施設。
場所は元首都圏内、西の海岸に位置している。
「東部のアダムも混ざってるの?」
その巨大な要塞学校を、遙か上空で見つめる影の一つが声を上げた。
二人とも真白い聖職者のような服を纏い、強い風などものともせず、ただ、「浮いている」。
身ひとつで地上を眺める様は、まるで神の如く。
「そのようだよ。毎年恒例らしいけど…」
「箱舟に収容されたことがないからよく解らないわ」
「確かに。建物内の地図は?」
「記憶してるわ」
「なら、いける?」
その問いに、二人のうちの一人がニンマリと笑む。
それを見て、二人のうちのもう一人も笑った。
「じゃあ、行こうか」
「神様に、会いに行こう」