AEVE ENDING




「あいつ等、あんたを探してるよ」

親切にも伝えてやれば。

「それをどうして君が相手してるの?」
「……わかんね」

相手の手違いだと言えば手違いだが、それを訊かれて困るのは倫子だ。

だって、彼らは。


(私の中のアダムを形作る、微弱な核物質を突き止めたのだ)

───神様の行方を探して、何故、倫子に辿り着くのか。




「……、神様?」

リィが震える声で、泣いた。
それを聞いた雲雀の眉間に刻まれていた皺が、深く深く、深くなる。

まるで敬虔な、信者を前に。


「…雲雀、」

思わず右腕を支えるのも忘れて手を伸ばしていた。
躊躇った手は、何故か雲雀の細い肩に行き着いてしまう。

(何故、よりにもよって肩……)


「…なに」

突然、肩に手を置かれた雲雀は訝しげにこちらを見ている。

いや、なにって言われても。

(傷付いて、いるみたいだったから)

―――なんて言えねぇ。


「…なんでも、ない」

のだけど、視線より高くある肩に置いた手の始末に困った。
どうしょうもないので、ポンポンと叩いてから離す。

(怪しい……)

この時、誤魔化し紛れに俯いた倫子には見えなかった。

「なにがしたいの」

そう皮肉った雲雀が、ほんの少しだけ、唇だけで微笑っていたこと。



「かみ、さ、ま…」

リィに、ロゥも続いた。

まるで夢心地、儚い声。
完全に神を崇拝する教徒の如く、恍惚とした眼を雲雀に向ける。

(…寒気がする)

まるで本当の神と対峙するかのように。

(雲雀の一体なにが、こいつらを平伏させるのか)

わからないし、わかりたくもない。

(…絶対的な神をあんたに「見て」いるのに、あんた自身を見ようとしない奴らばかりだね、雲雀)

これを言えば、あんたは私を殴るだろうか。


「神様…」

急におとなしくなったリィの躊躇いがちな指が雲雀に伸びた。
まるで触れることを畏れているかのように。
まるで祝福を乞う、哀れなこどものように。

不機嫌そうだった雲雀は、今や無表情になっていた。
抵抗しそうにないロゥの手も、既に離している。

リィの柔らかそうな白い指が、雲雀の白い首筋に触れた。




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