AEVE ENDING
「…随分、あっさり引いたね」
テレポートで姿を消した姉弟の残像を目にしながら、雲雀はぽつりと呟いた。
「…神様を慕ってたみたいだから、邪険にされてショックだったんじゃねえの」
倫子は傷だらけの腕を庇いながら、軽口を叩くようにそれに答える。
ジリジリと痺れる感覚ばかりが強くなり、もう痛覚は残っていない。
(…ヤバい、眠い)
血を流しすぎた。
体がうまく機能していない。
強烈な敵意を剥き出しにしていた姉弟の姿が消えて、気が抜けたのか。
(…右腕、死んだかな)
痛覚を感じないということは、神経が機能していないということだ。
痛みもひきつりも、なにも感じない。
「…行くよ」
ふらつく倫子を置いて、雲雀はいつも通りの歩調で歩き出した。
そういえば、いつの間に腕を離されたのか。
人気のない回廊に、革靴の音だけが響き渡る。
(…いやまぁ、おぶってくれるとは思いませんでしたが)
前を行く雲雀の背中をふらつく視界で必死に捉えながら、絡みつく足で前に向かった。
頭の中がグラグラと揺れている。
視界も、雲雀の凜と立つ背中も。
そうしてなにも、
「…、」
―――見えなくなった。
(真っ暗、だ)