AEVE ENDING
「…サイアクダ」
ただでさえ目を付けられているのに、またも悪目立ちしてしまう。
「でも、事情があったにしろ先に行くってお前に伝えるのは簡単なんだけどなー」
奥田が瞼を閉じたまま首を傾げる。
アミの性格を知ってるからこそ、彼女が無断で待ち合わせを反故した事に疑問があるらしい。
同感である。
「テレパスがあるもんね」
そうなのだ。
私達はアダムなのだから、遠くにいるアダムにテレパスで意志を通すなんて朝飯前。
なのに、何故だ?
「眠すぎて約束忘れたかな、あいつ…」
一番濃い線を口に出してみる。
あまりにも間抜けだが、アミはそんな子なのである。
「……あ、なんだあ?海が騒がしいなぁ」
奥田が瞼を閉じたまま海に向かって身を乗り出す。
ぎりぎりまで額をガラスに近づけ、眉間に皺を寄せて「見極める」ように。
その「眼」はなにを視ているのか。
「…ミチコ、お前、ちょっと急いで海へ行け」
奥田は瞼を閉じたまま横に立つ私を押しやった。
横顔がいつものようにふざけていない。
本気で、何かまずいものを視ているのだろう。
「早くしろ。なんかヤベーぞ」
「ヤベーってなにが」
「―――アミの奴。東に絡まれてやがる」
その言葉に、私は気付けば弾き飛ばされるように走り出していた。