AEVE ENDING
「初めてのキスの相手が君だなんて、僕もいやだもの。だから、今のは口移し」
雲雀が斜め下を見つめながらそう口にした。
長く湾曲した睫毛がくるりと跳ねて、なんだか愛らしい。
うーん、初めてかぁ。
「……そうか、お互い初めてか。アレだね、それじゃあ相殺……………………………………………………………………………え?」
間抜け面をした倫子に、雲雀が愛らしく首を傾げて見せた。
意外な事実に目を丸くした倫子を、雲雀の目が捉える。
「……雲雀、初めてだったの?」
この言葉に、雲雀は訝しげに眉を顰めた。
「当たり前でしょ。あんな汚いこと、そんなぽんぽんやらないよ」
(汚いとか言われた…)
でもそれなのに、水を飲ませてくれたのか、こいつ。
「…誘惑、多そうなのに」
「東部は男子校だからね」
「女教師とかいるじゃん。女男関係なくモテるくせに」
全然アリっぽいのに、と言い放つ倫子に、雲雀は心底から呆れた顔を向けた。
「…君、僕をなんだと思ってるの」
「だって、サル…じゃねえ、真醍も言ってたじゃん。お前ならアリだって」
「…古い話題持ち出すのやめてくれない」
古いって、つい昨日の話じゃなかったか?
うんざりした顔の雲雀を眺めがら、倫子はなんだか可笑しくなってしまった。
倫子が笑いを噛みしめていると、奥田がのろのろと戻ってきた。
顔面蒼白で出て行ったとは思えないほどのニヤけた顔で。
((…気持ち悪い))
まさか教え子ふたりにそう思われているとは露にも思わず、奥田はニタニタと笑っている。
「なぁんか、大変興味深いお話してたねー。ねえねぇ、先生も混ぜてよ。先輩としてご指導しちゃうよ」
教師として最低である。
「ロリコンは黙ってろ」
「みっちゃん、先生はロリコンじゃないって何度言わせる気?先生はピチピチの若い子が好きなだけです」
「そうですよね、先生はロリコンなんかじゃないですよね」
「ただのオヤジでしょ」
倫子の言葉を、意外にも雲雀が引き継いだ。
まさかその麗しい唇からオヤジだなんて単語が出てくるとは思わなかったが。