AEVE ENDING
「ちょっとそこぉお!なにも先生をいじめるので初コラボしなくてもいいでしょ!?なに、今の連携プレー!」
再び騒ぎ出した奥田をよそに、雲雀は横たわる倫子の顔を見ていた。
顔色はすっかり良い。
倒れた時は死人のような顔をしていたのだが、医務室のベッドに寝かせるとすぐ寝息を立て始めた。
(…回復力がゴキブリ並みだ)
奥田も奥田で、腕の傷を縫っただけで他の治療はしていない。勿論、輸血も。
致死に至る血を流したにも関わらず、この血色の良さはなんだ。
常人では、有り得ない。
(なにを、隠しているの)
奥田にしろ倫子にしろ、なにかを隠しているのは明らかだった。
(興味もないけど)
こう何度も怪しいと、否が応でも知りたくなる。
他人を捩じ伏せるのは得意だが、倫子にそれは通用しそうもない。
なら責めるべきは奥田、か。
「……」
思い至った人物を見やると、倫子にまだ虐められているのか泣きべそをかいている。
(……前言撤回。アレを相手にはしたくないや)
アレとは勿論、奥田たきおのことである。
不意に雲雀は視線をさ迷わせると、壁掛けの時計に目を遣った。
そろそろ薬が切れる頃だ。
「…橘、起きて。行くよ」
パイプ椅子から立ち上がった雲雀を、倫子は眉を顰めて見上げた。
「どこに?」
そう問い掛ける倫子に、雲雀は表情も乏しく、しかしその眼は酷く愉しげに口を開く。
「―――貧困エリア」
幸い、東部西部合同のセクションにはまだまだ時間がある。
その期間、存分に遊ばせて頂こう。
(僕に秘密を隠し通そうなんて無理だよ、橘)
美しい神は内心で口許を歪め、これから愉しくなりそうだと、小さく嗤った。
その指は私を貶めて、まるで裁決を下す神のように。
罪状を問うその唇でどうか私の罪を拭って下さい
どうか私を、貶めて、殺して。
────序章、幕