AEVE ENDING
―――神様。
それは余りにも乱暴な純粋であり、
それは余りにも、罪に爛れた私を惹きつけた。
(それはきっと、)
凶悪な迄に力強い支配力は私の命を容易く掴み、
───まるで甘い鎖のように、私、を。
―――例えるなら、生き物の咥内のような闇に、彼はその白い自身を貶めていた。
「神の器は、どうしたのかね」
低く、しかし柔らかな声が冷たい空気を振動させる。
異色の目をした双子の姉弟は、この声が大の苦手だった。
責められているわけでもないのに、まるで己の愚かさを露呈されるような、侮蔑されているような、そんな気分になる。
―――否が応にも。
「…お会いしただけに、留まりましたわ」
リィが膝を着いたまま頭を垂れた。
その隣に同じように跪くロゥも、震える口を開く。
「きちんとお話をする前に、邪魔が入ってしまって…」
言い訳めいているのは百も承知。
しかしロゥの怯えた声に、目の前の玉座の男は機嫌を損ねた風もない。
「邪魔?」
問い返す言葉は、やはり責めてはいるが。
「…「女」、が。神と床を共にしたと、自ら名乗っていましたが」
「邪魔をした女」、を思い出したのか、リィの声色が苛立たしげに低くなった。
しかし、そんなリィとは相対的に、男は白濁した嗤いを含んだ息を吐く。
溜め息の様なその笑みが、再び空気を振動させた。
「あの男が抱いた女とは興味深い。潔癖の男が、まさか」
男の言葉に、リィとロゥは首を傾げる。
自分達とは遙か高みに在る男の言いたいことがわからなかった。
「お前達、謀られたのよ」
たばかられた。
双子の頭がその言葉を理解しきる前に、男はくつりと嗤った。
「───今回の落ち度は赦そう。あれとの対面は、少々お前達には荷が重かったやもしれんな」
その言葉は屈辱であったが、しかし事実でもあった。
―――あの雲雀という名を持つ、神の器。
対峙した時の、あの身を引き絞られるような圧力を思い出して、今も鳥肌が立つ。
きっと、あの女はそれを感じていない。
敵視する相手に対するあの剥き出しの殺意は、純粋で無垢で、混じりけのない狂気。
まるで真っさらな赤ん坊を前にしたような心許なさと、それとは次元を異とする、完全なる威圧感。