AEVE ENDING
「いいえ、ミスレイダー。成長の兆しが見えないクズには、自分がクズだということをきちんと真正面から教えてやらなければ」
まるで汚物でも見るような軽蔑の眼差し。
ぷちりとなにかが切れた。
「…っ誰がクズだ、このクソ教師が!」
とうとう東部教師の暴言に、怒り沸点の倫子が火を噴いた。
倫子の怒鳴り声は辺りにも響き渡り、貧困地区の住民も、外部に立つ警備員達もこちらに視線を向けた。
「黙れ!貴様は毎度毎度、教師に対してその言葉はなんだ!身の程を弁えろ!」
負けずに怒鳴り散らす梶本に、倫子は冷ややかな視線を向けた。
「すんません、私目ぇ悪くって。教師がどこにいますっけ?え?どこ?あ、ミスレイダーなら見えてますよ。でも教師は見えない、クソがつくオヤジなら見えますけど」
一息で言いきった。
「貴様ァアアアア!」
舐め腐った倫子の態度に、東部教師は激怒した。
どうしようもないほどブチギレた梶本の手が勢いよく上がった。
「先生…っ!」
ミスレイダーが叫ぶ。
大勢の視線を集めるなか、それは勢いを増して倫子の頭を撃つ―――、
「先生」
筈だったのだが。
「…っ!……あれ?」
痛く、ない。
振り落とされた拳を倫子の頭激突寸前に止めたのは、それはそれは麗しい手だった。
「ひ、ばり…、くん」
まさか彼に邪魔されるとは思っていなかったらしい梶本は、予想だにしなかった妨害に狼狽えている。
そんな梶本を見やる雲雀の目は、あくまで無感情だ。
「遅れている分を早く取り戻したいので、先に進みます」
そう言い捨てると、掴んでいた梶本の腕を離し、代わりに目を丸くしている倫子の腕を引いた。
勿論、負傷していないほうの手を。
「え、あ、は?」
ズルリと引きずられ、倫子は自分の腕を引く雲雀を見上げる。
もしかして、助けてくれたのだろうか。